Japanische Fichte-Gesellschaft
日本フィヒテ協会


日本フィヒテ協会賞


フィヒテ協会賞】

第28回大会当当日に、2012年度のフィヒテ協会賞(研究奨励賞・若手対象)授賞式が行われ、受賞者である嘉目道人氏に、賞状、賞金、副賞が授与された。

――受賞対象業績――
  • 「事行としての自己関係性――フィヒテ知識学の言語哲学的変遷に向けて」(『フィヒテ研究』第19号、2011年)
――受賞理由――
 審査対象となった嘉目道人氏の論文「事行としての自己関係性――フィヒテ知識学の言語哲学的変遷に向けて」は、アーペルなどの超越論的語用論とフィヒテ知識学の類似性を指摘して、フィヒテ哲学を言語哲学的に変換する可能'性を示すことによって、フィヒテ知識学に現代的意義を与えようとしたもので、従来のフィヒテ研究が殆ど取り上げてこなかった領域に挑戦した意欲作である。とりわけ、超越論的語用論における「遂行的矛盾」による「究極的基礎づけ」の可能性をめぐる論争点に関して分析関係の文献にも立ち入り、また「自己関係」をめぐるカントとフィヒテの相違点を踏まえた上で、超越論的語用論の「反省的論証」がフィヒテの「事行」と重なるという点を明らかにしようとした点は独創的であり、その論述の仕方も明快である。ただし、超越論的語用論とフィヒテ知識学との対応関係に急ぐあまり、その都度必要となる論証を若干欠いている点が惜しまれる。今後はこれらの点を反省しつつ、さらに研究を展開していくことが期待される。以上の理由から、本年度の研究奨励賞を嘉目道人氏に授与することに決定した。

2012年11月
日本フィヒテ協会賞選考委員会